ともきんぐだむ

主にゲームやアニメなどの話題について、その時、考えたことを書きます。

英雄伝説III 白き魔女 〜好きなゲーム紹介①〜

さて、スタートしました「好きなゲーム紹介」
記念すべき第一回は日本ファルコムの傑作RPG英雄伝説III 白き魔女」です。

現在、ファルコムの主力コンテンツである「軌跡シリーズ」
その原点にあたるのがこの「英雄伝説シリーズ」であり、英雄伝説III, IV, Vは「ガガーブトリロジー」といって世界観を共有した作品群となっております。
ややこしいけど、ようは三部作の一作目です。

このゲームはオジサンたちの間では名作として語られまくっている作品ですが、当時のプレイヤーではなく、比較的最近プレイした人間の立場から、今一度この作品の素晴らしさをガッツリ語りたい! と、いつかどこかで絶対紹介したかった作品です。
というわけで、映えある第一回はこの作品に。

このゲームはオリジナルであるPC-98版と、Windows版では若干内容が異なっておりますが、筆者はWindows版しかプレイしていないので、基本的にそちらに準拠していきます。
最新のリメイクはWindows版をベースにKADOKAWAが手掛けたPSP版になりますが、Windowsユーザーならば、DMMでPC版が格安で販売されています。
dlsoft.dmm.com
PSP版は音楽がオーケストラアレンジされておりファルコム感が薄いのと、一部イベントがカットされてしまっているのが難点ですが、岩崎美奈子氏による可愛らしい立ち絵が用意されているのが魅力です。

さて、このゲーム。実に語りづらい。
というのも、「白き魔女」から続くガガーブトリロジー三部作は、システム面では極めてシンプルで最小限な作りをしています
シナリオは基本的に一本道で、街と街の間をつなぐ一本道の街道をあるきながら、襲いかかるモンスターを蹴散らします。たまに、洞窟などのダンジョンに潜り、ボスを倒す。
戦闘は、ほぼ全自動でキャラたちがモンスターと戦ってくれます。時々、手動で回復などの指示を出す程度で、あとは眺めていれば戦闘が終わります。
敵を倒せばレベルは上がりますが、特別な育成システムがあるわけではないので、自由度はありません。
つまり、育成面でも戦闘面でも、駆け引きらしい駆け引きはありません。
やりこみ要素といえば、せいぜい行く先々で集める本ぐらいです(本の収集要素は軌跡シリーズにも引き継がれていきます)
つまり、システム面で言ってしまえば、自由度は皆無で一本道の、ただストーリーラインをなぞるだけの最小限なものになっています。

それでも、このゲームは間違いなく名作です。
なぜなら、この作品はゲームに置いて最も大切な要素ーー「思い出」を生み出すことに特化されているからです。

この物語は、ラグピック村という小さな村に住むジュリオとクリスの二人が、成人の儀として世界中の神殿(シャリネ)を巡礼して回る、小さな冒険譚が主軸となっています。
ぼんやりした少年ジュリオとおませな少女クリスは、旅の先々で様々な文化の国を訪れ、個性豊かな人達と出会います。
カジノがあって貧富の差が激しい国、怪物に襲われる漁村、兄弟で喧嘩の耐えない国。
最強を目指す剣士に、おじゃま虫だけど人情家な盗賊。ジュリオにほのかに思いを寄せる薬師の少女。
ジュリオとクリスは、見たもの出会った人たちに思い思いのリアクションや感想を述べていきます。
それが時には大事件に発展することもありますが、最期にはみんな笑顔で大団円が基本です。
そんな少年少女の、ちょっとおっかなびっくりな冒険旅の描写が抜群にうまい。

ジュリオとクリスは、プレイヤー同様、この世界のことを何も知りません。
なので、出会うものや人に目を輝かせながら、旅をしていきます。
この活き活きとした描写のおかげで、プレイヤーは画面を通じて、二人を見守りながら一緒に冒険している感覚になるのです。

物語を通じて、ジュリオとクリスは伝説の白き魔女の影を追いかけていくことになります。
白き魔女についてはほとんど情報がありません。町の人達のうわさ話などを通じて断片を知るのみです。
この「ほとんどが謎だけれど、だからこそ惹かれてしまう」というバランス感覚が素晴らしく、プレイヤーも白き魔女という存在に惹かれていくのです。

物語の最後では、白き魔女がどのような結末を迎えたのかを知ることになります。
最後まで、白き魔女はその生き様のみがわかるだけで、どんな姿をしていたのか、どんな言葉を発していたのか知ることはありません。
ですが、白き魔女は、間違いなく心に残る存在となります。
老騎士デュルゼルの発した「なぜ、そこまで優しくなれる……世界が、お前に何をしたというのだ……」という言葉に全てが詰まっていると言えるでしょう。

白き魔女をめぐる大冒険を終えて、ジュリオとクリスはラグピック村へと還っていきます。
ゲームの世界を回りきったプレイヤーが、現実世界へと還っていくように。
旅を通じて得たもの、感じたもの、それらを胸に未来へと歩んでいく、ジュリオとクリスの背中を、デュルゼルの手紙が優しく後押しします。
この手紙の内容は本当に名文なので、ぜひその手でプレイして確かめてほしいです。

ジュリオとクリスの大冒険は本当に楽しいもので、「ずっとこの旅を眺めていたい」という気持ちにさせられます。
しかし、冒険にはいつか終わりが訪れます。
全てが完全に元通りではないけれど、それでも未来へと歩み始めた世界。
それが、「ゲーム」の終わりを意味し、世界がプレイヤーの手を離れて未来へと進み始めるサインです。
そのような寂しさこそが、プレイヤーがゲームの世界に没入していた一つの証拠ではないでしょうか。
ドラゴンクエストも、最後は主人公がプレイヤーの手を離れたということを実感させるシーンで締めくくることが多いですよね。
このゲームは、そんな世界への愛着に振り切った作りをしています。
僕にとって、この「喪失感」はゲームでしか手に入れられない、何にも代えがたい感覚です。
プレイヤーたちの手を離れ、デュルゼルの手紙の後押しを受け、未来へと旅立っていくジュリオとクリスの姿を見た時、プレイヤーは「素晴らしい冒険だった」と実感し、作品世界に別れを告げるのです。

「旅」というゲームの基本ともいえる要素を、極限まで丁寧に描いた「英雄伝説III 白き魔女」。
何より、「ゲームをプレイして、終える」という体験とストーリーの流れがきれいに噛み合っているからこそ、このゲームは思い出深いものとなります。
一つの世界に浸ることはこんなにも素晴らしい。そんなゲームの面白さを再確認させてくれる名作です。

こんな人にオススメ

・冒険物が好きな人
・モブとの活き活きした会話が好きな人
・世界観に没頭したい人
・友達以上恋人未満のわちゃわちゃが好きな人
・おとぎ話のような物語が読みたい人
ファルコム流のシナリオの源流を知りたい人

名曲三選

このゲームは音楽が実に素晴らしい。
ワクワク感に溢れた冒険を彩る、キラキラとした楽しいメロディに満ち溢れています。
あまりに名曲が多すぎて三曲絞るのは大変ですが、

LET’S START OK?
ワクワクした冒険を演出するこの上ない一曲。
ジュリオとクリスのスキップが目に浮かぶような、永遠と街道を歩き続けたくなるような曲。

愉快な仲間たち
コメディーシーンで使われる曲。
これを背景にドット絵のちびキャラたちが右から左へ大忙しに走り回る。
白き魔女に登場するキャラクターたちの底抜けの明るさがにじみ出た曲。

デュルゼルの手紙
エンディング直前に流れる、デュルゼルの手紙を読み上げるシーンで使われた曲。
デュルゼルの優しさと父性が詰まった、心温まる神曲
この曲があるからこそ、手紙のメッセージの重みが増す。

個人的な思い出

PSPで初めて空の軌跡を遊んで、ファルコムにどっぷりハマり始めた頃にプレイした作品。
このテキストの圧倒的”優しさ”に心打たれて、ファルコムにどんどん傾倒していくきっかけとなった。
ファルコムの作る街の人々って、本当に暖かくて、活き活きしているので、話しかけるのが楽しくて仕方ない。
なお、はじめはPSPリメイク版で遊んだのだけれども、一部イベントがカットされているという事実を知って、慌ててWin版を購入した。

このゲームを語る上で外せないのが、白き魔女ゲルドなのだけれど「このゲルドに対する想いをどう消化すればいいんだ!?」と思っていたら、スタッフ……というか近藤社長も同じことを思っていたようで、イースVIIIで一つの答えを見た……気がする。
近藤社長が白き魔女のファンサイトを運営していたことは有名な話で、エステルとヨシュアの物語にもその影響が伺い知れる。
英雄と呼ばれる人物の、日常を慈しむような素顔が大好きになったのは、この作品からかもしれない。

戦闘はほとんど予定調和で苦労することはないのだけど、キャラたちが自律的にピコピコ動いてるのは可愛いなーと思った記憶がある。
あと、魔法で大量に巻き込めると気持ちいい。


このゲームの魅力はパッケージのビジュアルです。


もう、これだけでこんな冒険してみたいな〜!ってなりません?
この作品の暖かさが伝わってくる、最高のパッケージだと思います。

あと外せないのは、ジュリオとクリスの関係性ですね!!!
ファルコムお家芸である、「グイグイ引っ張る少女と、振り回される少年」の黄金パターンです。
お姉ちゃんとも友達とも言えないような、そんな距離感が可愛くて素晴らしい。
ジュリオも、決める時は決める、でも肝心なところでは決まらない、といういい具合の可愛さがたまらない。
あと、クリスの健康的な美貌がいいですね! 脚!
PSP版の立ち絵は実に素晴らしい仕事をされております。

悲恋フェチ的には、フィリーも外せない。
とにかく「いい子」を感じるおしとやかなビジュアルがまず最高です。
森の奥でひっそり暮らしている彼女にとって、”異邦人”の塊であるジュリオとの冒険は実に眩しく感じられたことでしょう。
でも、そんなジュリオの隣には、家族同然といっていいクリスがいて……同世代の友人にも恵まれないフィリーの胸中を考えると、とても胸が痛みます。
もしかしたら、いつかまたジュリオから会いに来てくれることを、密かに待っているのかもしれません。

シャーラとグースはロ○ット団を彷彿とさせるいいコンビ。
というか、まんまロ○ット団すぎて、それで説明が終わってしまうのだけど、そんなコンビが嫌いになるわけがない。
ジュリオとシャーラが手を組む展開は、正直言って好物でした。



……こんなところでしょうか。
初回なので大分気合が入ってる気もしますが、こんな感じでちょこちょことゲームを紹介できればなーと思います。
好きなゲームに巡り合うきっかけとなれたら、幸いです。

それでは!