男性諸君!乙女ゲーム「悠久のティアブレイド」をプレイしよう!
この記事の目的はシンプルです。
偶然出会ったこのゲームを全力で紹介したい。
オトメイト発の女性向け恋愛ADV
「悠久のティアブレイド -Lost Chronicle-」
乙女ゲーかよ……と思ってブラウザバックしようとしたそこのあなた。
ちょっと待ってほしい。
このゲームは、コテコテのロボットSFなのだ。
人類が滅亡し、汚染物質が地上を覆いつくす世界が舞台なのだ。
主人公は「地下シェルターでひとり3000年の時を生き続ける古代人の少女」なのだ。
そして、「少女を守るという意思」を示したものだけが乗れる古代のロボット兵器「ティアブレイド」に乗って、少女を襲う敵と闘うのだ。
(公式サイトのイメージ画像)
滾らないか?
なんでも屋の少年が偶然出会った、悠久のときを生きる白髪の少女。
少年は少女に「本物の空」を見せることを約束する――。
あの日夢見たボーイミーツガールそのものではないか。
それを少女の視点から追いかけることができるのが、この「悠久のティアブレイド」なのである。
ネタバレしすぎない範囲でその魅力を語っていこう。
「宿命の少女」イヴ
(https://www.otomate.jp/tierblade/chara/)
このゲームの大きな魅力は主人公であるイヴだろう。
イヴは3000年という永遠に近い時をロボットと二人きりで生きており、【他人】という概念を知らない。そして【死】を知らない。
彼女は世界の謎にまつわる重要な秘密があるが、本人は記憶を失っており、それを一切覚えていない。
この段階で、乙女ゲー主人公としてはどうなんだという想いが拭えないが、「宿命の少女」としての設定を完璧に備えている。
そんな主人公イヴが、初めて生じた様々な感情に戸惑いつつも、少年たちと手を取り合って困難に立ち向かっていく。
優しさと清らかさと芯の強さを兼ね備えた、最高のヒロインである。
そう、このゲームはロボットアニメのメインヒロインの立場になれるゲームなのだ。
乙女ゲームには主人公を愛でるという文化があるが、ここまで共感性をかなぐり捨てて「ヒロインであること」に特化しているのはかなり珍しいと思う。
無垢で無防備で、純真爛漫なその立ち振る舞いは「そらドギマギするわ」というレベルで可愛い。推せる。
カギを握る巨大ロボ「ティアブレイド」
(https://www.otomate.jp/tierblade/chara/)
そして、困難に立ち向かうために主人公たちが搭乗することになるのが、イヴの騎士として護衛するための巨大ロボット「ティアブレイド」である。
騎士らしく優美でありながらも力強さを感じさせる素晴らしいデザインだ。なお、メカデザインは「マブラヴ」シリーズのBou氏が手掛けている。
ここがとても重要なのだが、ティアブレイドは搭乗者によってフォルムが変化する。
ちゃんとキャラのイメージカラーに合わせて装甲まで変わるし、作中のとある重要な設定に起因して武装も変わる。
攻撃には射撃を一切使わず、赤のシュド機は大剣、青のアタルヴァ機は双剣……といった具合にフィジカル重視で、搭乗者によっても細かく戦法が異なる。
さらには黒い敵性機体まで存在する。
(https://www.otomate.jp/tierblade/chara/)
尋常ではないレベルの拘りだ。とっととアニメ化してほしい。
なお、ロボットの戦闘シーンはアニメーションのない紙芝居だが、それでも拘りを感じる演出がされているので、自分は十分だと思う。
魅力あふれる主人公(攻略キャラ)たち
このゲームでは5人の攻略対象がいる。
彼らは、いずれも「いるよねこういうやつ!」というレベルでコテコテだ。
だからこそ、クソ熱い物語が展開される。
また、このゲームの世界観はかなり多様なテクノロジーが絡み合って非常に複雑なのだが、その要素を攻略キャラたちに分散させることによって、世界観を理解させることにも一役買っている。
大きな歴史のイベントが一つある中、それを取り巻く様々な真実が個別ルートを通じて明らかになっていくのは、まさにルート分岐のおかげである。
シュド
(https://www.otomate.jp/tierblade/chara/)
スラム育ちでお人好しの何でも屋。
青い空にあこがれており、イヴと一緒に青い空を見ることを約束して、赤いティアブレイドに搭乗する。
コテコテすぎて眩暈がしてしまうだろう。
この公式プレイムービーを見てほしい。冒頭、何でも屋の彼が軍人相手にスラムの皆と奔走するところから物語がスタートする。
……もう、こいつが主人公でいいんじゃないかな。
そんなシュドルートは王道中の王道。
ボーイミーツガールに始まり、紆余曲折を経てヒロインと手を取り合って困難に立ち向かうさまは、心を震わせてくれることだろう。
途中、ヒロイン視点を諦めてほぼシュド視点になるぐらいには、どこまでも主人公である。
シュドが自身の運命を理解し、イヴに手を差し伸べるシーンは、このゲームの中でも有数の熱さだ。
アタルヴァ
(https://www.otomate.jp/tierblade/chara/)
手先が致命的に不器用な頭脳派。
幼い頃から「少女を探し求めた男の記憶」を持ち、その少女を探し求めるために何でも屋のシュドの元へたどり着く。
これはこれでコテコテのクール記憶障害系主人公である。
彼のルートでは、とあるSFでお約束のツールがキーワードになってくるのだが、そのテーマに逃げることなく立ち向かう。
「存在の意味」や「選択と犠牲」を問い続けるこのシナリオは、熱血ボーイミーツガールなシュドルートと異なり、哲学的な方向に振り切っており、なかなかに考えさせる展開を迎える。
特に、バッドエンドが実に秀逸。
ヤジュル
(https://www.otomate.jp/tierblade/chara/)
飄々とした記憶喪失の男。
再生ポッドの中で半分死んでいたところを、ネオスフィアのオーバーテクノロジーで蘇生させられる。
女性の扱いに長け器用で何でもこなし、戦闘能力も傑出して高いお兄さんという、どこかで見たような要素を詰め合わせた設定になっている。
そして、記憶喪失である以上、当然、物語のカギを握る重要人物だ。
彼のルートは、彼の消せない「過去」といかに向き合うのかがテーマになっており、その大きすぎる過去を背負うと決めた時の彼の咆哮は、近藤隆氏の演技も相まって素晴らしい。
そんなダークホース枠と添い遂げることができるのが、乙女ゲームならではの魅力ともいえる。
闇を抱えた男を救済する……という点では、ある意味、一番乙女ゲームらしい攻略キャラなのかもしれない。
ロウ
(https://www.otomate.jp/tierblade/chara/)
「イヴ……俺と一緒に死のう!」といいながら一行をつけ狙ってくる悪役。
CV. 松岡禎丞で、いつもガンギマリの目で発狂している、これまた中ボス枠に居そうな感じの小物感溢れる男だ。
初登場時はそのクレイジーでヤンデレでサイコな言動と、彼の専用機である黒いティアブレイドで絶大なインパクトを与える。
初見時は「黒いティアブレイドだとぉ!?」と叫ぶこと請け合いである。
そして、ここが大事なのだが、彼のルートが存在する。
こんな彼が、主人公になれるのだ。
確かに、この手の悪役が、こちらを受け入れて第二の主人公と呼ばれるポジションになることはあるだろう。
しかし、ヘタレで弱虫で小悪党感の拭えない、ルートによっては悲惨な結末を迎える彼が、ヒロインと手を取り合って唯一無二の主人公になれるのだ。
それだけで、このゲームにはとんでもない価値があるといえないだろうか? まさに、乙女ゲーム様様だ。
その代わり、恋愛シミュレーションゲームとしては禁忌に近い一手を打っているが、些末なこと。
彼が主人公として世界を守る姿を見届けられるだけでも、このゲームを買う価値がある。
クレイドル
(https://www.otomate.jp/tierblade/chara/)
ご安心ください。
無機物ルートも完備しております。
彼はクレイドル。3000年もの間イヴのお世話をしていた管理AIである。
そんな身の上であるために、彼は過去に起きた出来事を詳細に記憶しているが、何者かの命令によって開示することができない。どのルートを通じても、重要人物である。
ルートによっては、その実を投げうってボスに立ち向かったり、脇役になりがちながらも、ニクイ献身ぶりを見せつけてくれる。
そんな彼のルートでは、彼が過去に犯した一つの「過ち」が明かされる。
AIである彼がなぜそんな行動をとってしまったのか。明らかになったとき、あまりの切なさに涙が出てしまった。
……ただ、彼のルートについて正直に言えば「日和るな」と言いたい。
いや、乙女ゲームである以上、仕方ないのかもしれないが、それでも日和らないで突っ走ってほしかった。
ある意味、最初にこのイカすメカボディで登場したこと自体が十分な冒険だったのかもしれないのだが。。。
なお、クレイドルルートではちゃんとティアブレイドがむちゃくちゃかっこいいクレイドルフォルムに変形するので必見だ。
まとめ
以上、5つのルートをティアブレイドでは楽しむことができる。
そして、それらを総括したトゥルーエンドまで存在する。トゥルーエンドで明らかになる一つの事実は、その壮大さと伏線の妙にプレイヤーの心を震え上がらせるだろう。
……どうだろう。ものすごく滾らないか?
このゲームは、様々なパターンの主人公を選択し、宿命の少女のために巨大ロボットに乗って戦うという趣旨のゲームなのだ。
ヒロインを選択するのではなく主人公を選択することで物語が変わっていくという形を選べたのも、乙女ゲームというジャンルならではだろう。
その結果としてヤジュルやロウといった、通常では主人公になれない連中が主人公となって少女とティアブレイドに搭乗していく姿が見られる。
こんな贅沢なことがあっていいのか?
そして、その背後には極めて綿密に練りこまれたハードSFの設定がある。
そもそも、この世界の一般的な人類は工場で生産されるというディストピアぶりだ。
なぜ、世界は終末を迎えているのか。なぜ、イヴは3000年もの間一人地下シェルターに眠っていたのか。そもそも、ティアブレイドとは何なのか。
全てに答えが用意されており、テクノロジーに翻弄され滅びた残酷かつ無情な人類史が、複雑に絡み合って織り成されている。
この世界設定はスタッフ肝入りであるらしく、ファンディスクである「悠久のティアブレイド-Fragments of Memory-」では、数千年規模の人類史年表を埋めることで、歴史の真実を探っていくモードがメインコンテンツである。乙女ゲームどこいった。
乙女ゲームというと、どうしても先入観に捉われて二の足を踏んでしまう男性は多いと思われる。
が、カッコいいものに性別なんて関係ないのだ。
ロボットアニメと乙女ゲームという二つの媒体が奇跡的な化学反応を起こして生まれた「悠久のティアブレイド」。
是非、手に取ってプレイしてほしい作品だ。
欠点もある
このゲームには、ひとつ、致命的な欠点が存在する。
それは、現状PS vitaでしかプレイすることができないという点だ。
PS vitaというハードは既に生産を終了しており、今から手を出すには気が引けるという人も多いだろう。
だからこそ、この記事が少しでもプレイ人口の拡大に寄与し、Nintendo Switch版の発表に繋がるといいなと願っている。