ともきんぐだむ

主にゲームやアニメなどの話題について、その時、考えたことを書きます。

シリーズの知識ゼロで「リョーマ!」を見に行った男のはなし

映画「リョーマ! 新生劇場版テニスの王子様 -decide-」を見てきました。

 

テニプリという作品とはあまり縁がないまま過ごしてきたのですが、
ある日、twitterで「開始3分で男が光る」とオススメされたので、見に行くことを決意しました。
開始3分で男が光る映画は絶対に面白い。知らんけど。


私は、テニプリという作品に対しては、もちろん存在は知っていたけど、一度も触れたことのないという作品でした。
当時ジャンプを読んでいなかったし、今は亡きニコ動の空耳ブームもなんとなく関わることなく生きてきました。
なので、テニプリについてはおもしれー女を見つけるのが上手い人がいるらしいということと、なんかデカすぎるらしいということしか知りません。

そんな人間がリョーマを見に行ってきたわけですが、結論から言えば非常に面白かった。

ただ愉快というだけではない作品の熱に魅了されました

 

その感想をつらつらと書いていきたいと思います。

 

 

 

 

 

以下、ネタバレ注意だけれど、多分見てない人は何言ってるかわからないと思うので気にしなくていい。

 

 

 

 

 

 


まず、勧めてくれた人に一言いいたい。


「開始3分で男が光る」は確かに事実だったが、サイヤ人になるとは聞いてない

 

壮大なBGMと共に変身した主人公、リョーマがテニスの試合を始める。

客席にいる仲間やライバルたちも立ち上がり、踊り始める。ダンスと歌声に包まれながら、二人はラリーを続けるのだ。

この時点で「何を見せられているんだこれは」という気持ちが拭えなかったが、まあミュージカルだしそういうこともあるだろうと思うことにした。知らんけど。

とはいえ、スコアボードが虹色に輝いて主人公たちをライトアップするという発想には度肝を抜かれた。

スコアボードは確かに光るけど、あれを舞台照明だと思う発想力はすごいと思う。現役のテニスプレイヤー、誰もアレを舞台照明だと思っていないと思う。

リョーマが打ったボールは二つに割れて、相手に向かっていく。

この時点で何らかのストップがかかりそうなものだけど、相手はドヤ顔でそれを打ち返す。

それを見越したリョーマはとどめと言わんばかりにボールだった破片をスマッシュで打ち込む――

この世界ではルールよりも闘志が優先されるらしい。

相手が負けを認めたら負けなのだ、多分。

この時点で、世界観に飲まれていたと思う。

 

そして舞台は変わり、アメリカラスベガス。

武者修行に来たという越前リョーマと、旅行に来ていた竜崎桜乃はテニスギャングと名乗る連中に絡まれる。

ゴールさえあればできるストリートバスケならまだわかるが、面積が必要なテニスは無理があるのでは・・・? と思ったらちゃんと路地裏にテニスコートがあった。さすがアメリカだ、広い

要求は一発2000ドルの賭けテニスをすること。むちゃくちゃに脅しているが、あくまで目的はテニスをすること。しかも、負けたら金をくれるらしい。

きっとポケモントレーナーのようなものなのだろう。

 

いざ勝負を受けたらギャングたちはラップバトルで煽ってくる。

ポケモントレーナーも勝負の前には煽り散らかしてくるので、テニスの世界もきっとそういうものなのかもしれない。

それを受けて、リョーマはテニスボールを相手に打ち込みながらラップで応戦しだした。

意外とやればできるものらしい。いきなり英語で、しかもラップは厳しくないか? と思ったが、後にわかるがリョーマは帰国子女なので特に問題はない。

この作品、変なところで設定がちゃんとしている。

 

しかし、ギャングはギャングなので勝負に負けてたというのに桜乃にナイフを突きつけて脅してくる。

それを止めるために、リョーマがテニスボールを打ち込んでナイフを弾こうとしたら、不思議なことが起こった。

 

もう一つのテニスボールが飛んできて核融合を起こしたのだ。

二つのテニスボールが、蒸発して、融合した。

すると、宇宙が生まれた。

テニスボールが宙に舞うテニス的小宇宙が世界を飲み込んだのだ。

 

目で見たものをなるべく頑張って忠実に言葉にしたが、それでも何を言っているのかわからない。

そして、宇宙が爆ぜたと思ったらリョーマと桜乃はタイムスリップしていたのだ。

・・・テニプリ上級者にとってはこれぐらい当たり前なのか?

 

リョーマの年齢差を見る限り、10年ほどだろうか。

全米オープンのポスターを見たで一発でタイムスリップしたことを理解するあたり、リョーマは頭脳も高いようだ。

それにしても、アスリートらしくランニングのフォームが綺麗で笑ってしまった。

 

リョーマにとって父はテニスの師であり、超えるべき壁だった。

そんな父に引退を決意させたこの全米オープンの全貌はなんとしても知りたいことだったのだ。

そこで、リョーマは自宅に不法侵入する。この図太さもなかなかのものだが、運悪く父・南次郎が忘れ物を取りに戻ってきてしまう。

偽名を名乗ることすらしないリョーマに対して、南次郎は「なんだ、俺のファンか!」と納得してしまう。

「馬鹿なとこも含めて親父だ」と喜ぶリョーマだが、僕は君の神経の太さが恐ろしいよ

二人の不法行為を許しつつも、ちゃんと「二度とうちには近づかないでくれよ」と念を押す南次郎は立派な人物だと思う。

 

そんな犯罪者二人に対して気前よく、一緒に汗を流そうと誘ってくれる南次郎。

そこには、いかにも怪しいアダム・アンダーソンという大会主催者と、全身からザコアピールをしているクリスと名乗る男がいた。

そして、練習試合として南次郎はクリスと戦うことに。

リョーマは全盛期の父のプレーを目の当たりにして大興奮で歌い始めた。

目でボールを追うだけではなく、守護霊でボールを追っている。一流のテニスプレーヤーはすごい。

そして南次郎の実力はさすがの一言で、見事クリスをボコボコにしてしまった。

逆上したクリスはラケットを投げた。南次郎はそれをラケットで受け止めた。それによってラケットが破れてしまうという大惨事に。

ラケットの交換を提案されるが、南次郎は敗れたままのラケットでテニスを続行したのだ。

一方で、クリスは意気揚々と予備のラケットを取り出し、試合を続行する。壊すことを想定したのか。

現実でもそうだとは思うが、この世界のテニスラケットは輪をかけて消耗品らしい

そんな世界でラケット一本で立ち向かうリョーマは、さぞかし良いラケットを使っているのだろう。

名ラケット鍛冶みたいな巨匠がいてもおかしくない。

 

ラケットの縁部分で戦うという離れ業を披露しながらも、なおクリスを圧倒する南次郎。これがどれぐらいの凄さなのか、最早僕にはわからない。

しかし、クリスとの試合に気を取られているうちに、桜乃が南次郎の娘と勘違いされて誘拐されてしまう。

リョーマは車の中にテニスボールを打ち込むが、マフィアの歯を砕くことしかできず、桜乃は連れ去れてしまった。

 

そして、現場には全米オープン八百長試合をするよう要求する脅迫文が。

なんで子供の性別すら事前に調べてないんだよと思わなくもないが、脅迫状にわざわざ「A GIRL WILL BE DEAD(うろおぼえ)」と書いてあるあたり、娘の可能性も想定して、あの切り貼りの手紙をわざわざ作っていたようだ。かわいい。

戸惑う二人だったが、手紙に店の名前が思いっきり書いてあるという大失態を犯したために、リョーマは単身マフィアの巣食うバーに乗り込む。

 

そこにはエメラルドという長身の女性が待ち構えていた。

「お前、テニスをするのか?」とエメラルドはリョーマに興味を持つ。この世界において、テニスをしていることはどんな護身術よりも重要なことだと思った。下手なパスポートより効力がある。

エメラルドの案内によって、リョーマは桜乃の捕らえられている倉庫にたどり着く。
しかし、エメラルドはただでは返さないという。

突如ライトアップされて、倉庫だと思っていた場所が広大なテニスコートであることが発覚した

それまでの演出から、てっきり桜乃は狭い密室に閉じ込められていると思い込んでいたが、完全に間違いだった。

あんなだだっ広い空間の真ん中で放置された桜乃の気持ち、プライスレス

 

再会の喜びもつかの間。エメラルドはそれだけでは済まさない。

二人とも開放するか、二人とも捕らえられるか、運命をかけたテニスを申し込んできた。なんだ、こいつもテニス脳か

後にわかることだが、エメラルドは父親に反発して家を飛び出していたのだ。でも、それでやっていることがテニスなら、可愛いもんだと思う。

リョーマが受けて立とうとした矢先、大量のテニスボールが倉庫を襲う。

テニスでは使っていいボールは一つだけだが、今はマフィアとの抗争。弾数に制限などない

この世界のマフィアは基本的にナイフしか使わないので、遠距離攻撃ができるテニスに圧倒的な分がある

そう、テニスプレーヤーであれば、マフィアと対等に渡り合えるのだ。

 

南次郎の手引きで、リョーマと桜乃は倉庫を脱出した。

そこで、リョーマは二日間逃げ切って、南次郎に八百長などさせないことを誓う。

憧れだった父が、八百長という形で引退を飾ることが、許せないのだ。

 

そして、マフィアからの逃走劇が始まる。

ここで、リョーマはテニスで抗戦することはせず。ゴミ箱を障害物にしながら逃げていく。・・・ゾンビゲーかな?

なぜここでリョーマがテニスをしなかったか。

細かな時系列を覚えていないが、おそらく倉庫のシーンで「テニスは人を傷つけるためのものではない」というセリフがあった。

いまさら何をと思わなくもないが、リョーマはこの信念のために、いたずらにテニスをしなかったのだろう。

この世界のテニスは危険すぎるので、妥当だと思う。強すぎる力の使い方を間違えてはならない。

 

しかし、そんなリョーマも桜乃の危険が迫っている時には迷わずテニスをしている。

真に大切な人を守るときにだけ、あるいは真の強敵と戦う時だけテニスをする。リョーマをカッコいいなと思った瞬間だった。

・・・自分でも何言ってんのかわかんなくなってきた。

 

そんなこんなで、ホウキと缶を拾うまでリョーマは防戦一方だったが、ホウキと缶を手に入れてからは、反撃をし始める。

はがねのつるぎで戦うのは暴力だが、ひのきのぼうならば問題がない。

ラケットとボールがいかに危険な存在か、よくわかるシーンである

 

ビルの屋上に追い込まれたリョーマ

迫るマフィアであったが、リョーマは大豆が詰まったツボを転がすことによって、マフィアに立ち向かう。

あのスピードのツボを避けられないわけがないだろうとか、自らツボを抱えて無防備になるなよとか、そもそも路地裏の屋上に大豆がツボに詰まってる状況ってなんだよ納豆でも作ってんのかとか、突っ込みたいところは山ほどあるが、気にしてはいけない気がする。

 

一人のマフィアを撃退したが、背後から忍び寄るもう一人のマフィアには気付かず、桜乃を人質に取られてしまう。

揉み合ってビルから落ちてしまう桜乃を見て、リョーマは迷わずテニスをする。

大切な人のためならば、テニスを躊躇ってはならないのだ。

結果として桜乃はビルから落ちておらず、マフィアたちを戦闘不能にして二人はビルを後にしたのだった。

 

二人はなんとか教会へ逃げ込む。

マフィアとの抗争中に三つ網を切られてしまった桜乃に対し、リョーマはリボンを渡す。ポニーテールになった桜乃はとても可愛らしい。

誰もいない教会で、二人は想いの丈を歌い合う。

いつもどんくさい自分を助けてくれるリョーマへの感謝と、いつも前向きな桜乃への感謝。

とても感動的なシーンなのだが、このシーン、周囲から星が降り注いでいるのである。

なんで、黄色い物体が降り注いでいるのにテニスボールじゃないんだ?」ということが気になりすぎて、歌詞に集中することができなかった。

もうだいぶん毒されている。

 

一夜明け、今日一日を逃げ切ろうとしたときに、三人目のマフィアが姿を現す。

エメラルドと、首領、二人の上司の板挟みになる哀しき平社員の姿である。

マフィアはリョーマを脅し、運転させようとするがリョーマは当然免許を持っていないため、運転ができない。

仕方なくマフィアが運転することになり、みんなちゃんとシートベルトをして、車は出発する。

テニスにルールはなくても、道交法はちゃんとある。

 

しぶしぶ運転するマフィアだが再三にわたって「余計なことはすんなよ!」と念を押す。

リョーマも言っていたが、これではやれと言っているようにしか見えない。

ダチョウ倶楽部の精神も時と国境を超えるらしい。

 

そしてフラグ通り、ハンドルにテニスラケットを刺すという荒業でだいぶんヤバい形で車を事故らせ、脱出に成功する二人。

あの三人の中で一番危ないのはシートベルトを外したリョーマのはずだけど、彼はテニスをやっているので無傷なのだろう。知らんけど。

シートベルトの重要性を教えてくれる素晴らしいアニメだと思う。

 

そして脱出した二人は、南次郎に連絡を取るために電話ボックスへ駆け込む。

そこで、不思議なことが起こった。

テニスボールを媒介として現代とつながったのだ。

リョーマのテニス部の仲間と思しき面々が、歌でリョーマを励ましてくれる。

「いつだってお前にはテニスがある」と、リョーマに思い出させてくれる。

なんかミイラがいた気がするが、気にしない。

 

そう、リョーマは人を傷つけないために、平和的な手段(缶とかツボとか)で逃げてきたが、大事なものを守るためにはいつだってテニスをしてきた。

その精神を思い出せと、部長はリョーマにエールを送ってくれたのだ。

リョーマが逃げではなく、困難に立ち向かうことを思い出させてくれる、重要なシーンなんだと思う、多分。

電話が終わったリョーマは、電話ボックスの上に乗っていた。棒立ちをしていた。

見つけてくださいと言わんばかりの目立ち方をしたせいで、彼はマフィアにすぐに見つかった。

とんだドジっ子である。

 

公開三週目ということで訓練された客しかいないはずなのに、このシーンだけは客席から笑い声が聞こえたので、余程異常なんだと思う。

 

運命に立ち向かうことを決めたリョーマは、自らエメラルドの前に現れた。

その時、エメラルドは失態を犯したマフィアに灸をすえていた。

タマでタマを潰す極道テニスのシーンはさすがに震え上がった。下手な拷問シーンよりよほど怖い。

テニスは使いようによっては暴力になる。この作品の重要なテーマの一つなのかもしれない。

 

リョーマは、エメラルドにテニスの真剣勝負を挑む。

エメラルドは、足テニスの使い手。壁打ちをしているシーンでボールを蹴っていたのは伏線だったのだ。

足テニスってなんだよと思わなくもないが、高校の時バレーボールを足でやるサッカー部のアホがいたので、それに類する何かだと思う。

 

脚力の方が腕力よりも優れているので、使いこなしたときにその破壊力は大きい。

この作品には訳知り顔でそんな解説をしてくれる役すらいない。

 

リョーマはテニスラケットを持ち替え、利き手を誤魔化すテクニックによって勝利をつかんだ。

すぐにはフォームを変更できない足テニスにはできない芸当であり、見事に足テニスの弱点をついた形となる。

この作品には訳知り顔でそんな解説をしてくれる役すらいない。

 

そして迎えた全米オープン

安否の知れぬリョーマと桜乃を心配して、南次郎は対戦相手に押されていた。

全日の時点で連絡を入れるという約束だったが、なぜか電話が時空を超えてしまったので仕方ない。

普通に客席で家族が全員集合しているが、マフィアは家族構成を何も把握してなかったのでこちらも問題ないだろう。

つくづく、隙があるようで隙のないアニメである。

 

そんな様子をワイン片手に高みの見物を決めるアンダーソン。

悪役像が芸術的なまでに古典的で笑う。

そこに現れるこれまたどこかで見たことあるようなマフィアのボス。

その車椅子を押しているのはエメラルドだったが、アンダーソンはそんなことに気付かずに背が高いなどと悪口を言う。

アンダーソン、さすがにおかしいことに気付こう。

 

そこからは華麗なる逆転劇だ。

リョーマの才能に惚れ込んだエメラルドが、父親を説得してアンダーソンとの契約を破棄させた。

見苦しく脅しをかけるアンダーソンだが、その会話は会場に筒抜け――。

そのサポートをするのはかつて戦ったマフィアたち。

実にベタではあるが、それがかえって心地いい見事な勧善懲悪だった。

 

八百長問題が決着を見たことで、南次郎は遂に本気を出す。

サムライゾーンと呼ばれる空気の渦を作り出すことでボールを吸い込む。

ボールを高速回転させ、着地と同時に引き返させる。

なんでもありな超魔術を「おなじみの必殺技!」みたいなノリで次々と決められたが、これは果たしておなじみなんだろうか。

もうマヒしているので、当たり前のように思えてきた。

最後は、ジョーのモヒカンをボールで削り取って華麗にフィニッシュ。負けたことよりも髪を失ったことの方がダメージがでかかったらしい。

 

八百長騒ぎからの日本人の優勝という顛末に、ブーイングしながら帰っていく観客たち。

そして空になったスタジアムに、リョーマと南次郎が残された。

二人にできることはもちろん、テニスだ。

 

ここで映画全編を通じて語られてきた謎――

 

南次郎に引退を決意させた謎の選手とは誰だったのか? 
なぜ、大々的に語られている試合にも関わらず、一切の記録が残っていないのか? 
父は頑なにその正体を語ろうとしなかったのか? 

 

全ての答えが出た。

 

その正体は、父の背中を追い、父を超えようと努力してきた越前リョーマその人だったのだ。

全米オープンと一切関係のないプライベートマッチーー身内しか証人のいない戦いが始まった。

 

高らかな歌声と共に、時を超えて仲間が、ライバルが客席を彩る。

なぜなら、仲間とライバルが今のリョーマを形作っているものだから。

私はその物語を詳細こそ知らないが、それでもリョーマがこれまでの人生を全て背負って、全盛期の父を超えるという、本来あり得ない目標に立ち向かっているということがしびれるほどに伝わってきた。

そのリョーマの一球一球に南次郎も全力で答える。

言葉などいらない、純粋な球の応酬。そして、リョーマのスマッシュで試合は決着する。

勝利の瞬間、桜乃とリョーマの身体は光に包まれ、消えた。

 

余計な言葉など一切ない。ボールの応酬だけですべてを語り合う、夢のような試合だった。

本当に素晴らしく、この対決ではただただ鳥肌だけが立っていた。

 

そして時は現代に戻る。

桜乃は過去であった出来事を一切覚えていない。髪型も戻っている。

リョーマに記憶が残っていたのかは、一切語られない。

ただ、モデルに転身したエメラルドの視線に背中を押され、桜乃の託したバッジと共に、リョーマは再び前へと歩き出した。

 

そして南次郎も、リョーマの正体をどこまで知っていたのかは語られない。

もしかしたら、あくまでただのファンと思っていたのかもしれないし、実の息子だと気づいていたかもしれない。

ただ事実として、彼は新たな才能の育成を決心し、現役を引退することを選んだ。

 

それをどう解釈するかは、あの試合を見た者ひとりひとりが判断すればよいのだろう。

そんな余韻を残すエンディングが素晴らしいと感じた。

 

人が光るという理由で見始めた本作品だったが、父を超えるというリョーマの熱い想いや、困難を乗り越えるためにラケットを手に取るリョーマの決意、最後の夢かうつつかわからない幻の一試合のために全ての伏線が結実していく巧みなストーリー展開に心を震わされた。

シリーズ未見でも、ここまで多くの人を熱狂させる理由が伝わってくる、そんな作品だった。

機会があれば、原作にも触れていけたらと思う。

素晴らしい作品を生み出してくれたスタッフに感謝を。