ともきんぐだむ

主にゲームやアニメなどの話題について、その時、考えたことを書きます。

ファイアーエムブレムと他のSRPGは別のゲームだという話

こんにちは。ともき(@tmk_423)です。

 

この度、晴れてファイアーエムブレム風花雪月を一周クリアしたので、SRPGというジャンルについて俯瞰する記事を書こうと思います。

www.nintendo.co.jp

ゲーム自体ボリュームたっぷりで大変面白く、ぜひ詳細に魅力を語りたい作品なのですが、今回は別の話。

現在「うたわれるもの」と同時進行でゲームを勧めているため、両者を比較して気づいたところを、SRPGの成り立ちから含めて考えていきます。

 

SRPGというジャンル

シミュレーションロールプレイングゲーム、略称SRPGとはざっくりと言うとシミュレーションとロールプレイングの合いの子。将棋の駒のようにユニット(キャラクター)を進めて、敵を撃破していく戦闘システムを採択したゲームがこう呼ばれることが多いです。

ウォーシミュレーションゲームとの違いは、ユニットは一人のキャラクターを表しており、成長要素があること。ロールプレイングゲームとの違いは、多対多の「戦場」に見立てたフィールドを模した戦闘システムを採択していることが挙げられます。

このジャンルのメリットは、まさに多人数 vs. 多人数の戦いが描けるということ。そのため戦争をモチーフにした作品や、登場キャラクターの多い作品がこのシステムを採択することが多いです。

 

代表的なSRPG

SRPGというジャンルの元祖に当たるのがファイアーエムブレムです。初出は1990年にファミリーコンピューターで発売された「ファイアーエムブレム 暗黒竜と光の剣」。今ならNintendo Switch Onlineに加入することでプレイできます。

ユニットごとに成長の傾向などが異なる「クラス」や様々な影響を及ぼす「地形」など、代表的な概念はここで完成しています。

また、ほぼ同時期にスーパーロボット大戦シリーズも産声を上げています。こちらも、大量のキャラクターを立たせるために、また原作に戦争をテーマにした作品が多いために、SRPGというジャンルの草分け的存在となっていきます。

これらの作品を皮切りに、ラングリッサーシリーズやシャイニング・フォースシリーズなど、様々なSRPGシリーズが生み出されていきます。

これらの作品に共通しているのは、戦争シミュレーションの延長にあるということです。ファイアーエムブレムは「ファミコンウォーズ」という、FEと同じインテリジェントシステムズが手掛けたウォーシミュレーションをベースとしています。この辺の経緯はこちら

『ファミコンウォーズ』がなければSRPGが誕生しなかった──戦略SLGのメジャー化、RPGと融合させ『ファイアーエムブレム』を生んだ任天堂の功績【ゲーム語りの基礎教養】

そんな中、特に高い評価を得たのが松野泰己が手掛ける「伝説のオウガバトル」ならびに「タクティクス・オウガ」です。いずれもスーパーファミコンで発売されています。

この作品では、当時二次元的だったマップに高さの概念を取り入れ、立体的なマップを作り上げました。高所からならば、弓の射程が伸びるなど、様々な戦略性を生み出しています。

また、戦争をベースに極めて重厚で濃厚な人間ドラマが描かれており、多様なキャラクターも後に与えた影響は大きいでしょう。

もう一つ大きな特徴が、戦闘の戦闘画面に移行せず、マップの中で直接殴り合いをする点です。このことがマップ上のアイコンを「兵団の象徴」から「一個人」へとシフトさせました。

そして、後のSRPG作品は、タクティクスオウガの戦闘システムをベースに進化していくこととなります。タクティクスオウガは戦争モノでしたが、このあたりからSRPGは「戦争」に限らなくなっていきます。

つまり、ユニットが「兵団」ではなく「個人」へと変化していったがゆえです。

90年代後半には、二次元的マップながらも、豪華声優の演技も含めたドラマチックな演出を取り入れたアークザラッドシリーズ松野泰己が手掛けたファイナルファンタジータクティクス。可愛いキャラクターデザインと多様な召喚獣がウリのサモンナイトシリーズなどが産声をあげます。

この傾向は2000年に入るとますます加速し、戦争と限らずとも、大量のキャラが入り乱れる戦闘システムとして、SRPGが自然に採択されるようになります。

ADVゲームと融合したうたわれるものや、豊富なやりこみが特徴の魔界戦記ディスガイアシリーズ、TPS的な視点移動をともなう戦場のヴァルキュリアシリーズなどがこのあたりに誕生しています。

うたわれるものは戦争ものでありながら、主人公たちは少人数の別同舞台として描写され、各ユニットはあくまで兵団ではなく個人であるあたりに、SRPGに対する認識の変化が現れています。

タクティクスオウガ以前のシリーズで、現在も新作が出続けているのは、ファイアーエムブレムスーパーロボット大戦のみであり、逆に言えばこれらのシリーズだけはタクティクスオウガの影響を受けていません。そのあたりに、FEと他のSRPGの違いが現れています。

 

で、何が違うのか

FEはSRPGの源流にあたるので、他のSRPGと基本的な特徴は変わりません。

地形やクラスと言った、SRPGの基本構成要件は、ほとんど同じです。SRPGにおいて、ユニットの育成は重大項目のひとつなので、育成システムはそれぞれ独創的なものを用意していますが、これらの基本は踏襲されているものがほとんどです。

では何が違うか。

 

まず、射程が短い

FEでは魔法も弓も原則として射程は2マス分、つまり通常のユニットより一歩多いだけです。近年の作品では長いものも増えてきましたが。

つまり、移動や位置取りという観点において、近距離ユニットと遠距離ユニットの違いはほとんどなく、反撃を受けるか受けないかが最大の違いとなっています。

その弓も近距離の攻撃には反撃できないので、この関係は遠距離攻撃を実現すると言うよりは、互いにノーリスクで殴れる関係として存在していると言ったほうが正確です。

通常のSRPGでは長射程武器というと、射程が3~5マスあることが当たり前なので、相手が攻めに来るというリスクをほとんど考慮せずに、前衛の後ろから矢を浴びせられます。多くのSRPGが遠距離優位になりがちなのはこの辺が理由。

タクティクスオウガでは、なぜそんなに射程が伸びたかと言うと、ひとつは高低差のせいです。「高所からならば長射程はより遠くへ届く」というシステムを実現するためには、矢の挙動をある程度、長めにとって置かなければならない。

もうひとつはマップ上で戦闘を行うためです。高低差のあるフィールドで直接キャラクターが矢を射る以上、ある程度の射程がないとリアリティがないんですね。

 

次に、範囲攻撃が少ない

FEにおいて複数人を攻撃する手段は極めて限られます。基本的にはタイマンの殴り合いです。これは、もともとユニット同士の戦闘が「兵団同士の直接戦闘」を模式化したものに由来しています。複数兵団にまたがるMAP兵器など、現実的には存在しません。

しかし、これもユニットが兵団から個人へと変わっていくことで変化します。タクティクスオウガもそうですが、多くの魔法攻撃はある一定の範囲に作用するものとなりました。強力になればなるほど広範囲を焼き払うようになり、いかに多くの敵を巻き込むかが魔法使いの醍醐味となっている作品も少なくありません。

 

最後に、相性補正が極端なこと

SRPGには、ユニット間に相性のある作品は多いのですが、相性による補正が大きい作品はあまり多くありません。

多くの作品はキャラクターを個人として暑かった結果、戦闘システムが通常のRPGに近付き、「有利相性をぶつけるゲーム」ではなく、「HPを削り取るゲーム」になっていることが多いです。そのため、多少の不利相性でも突破できてしまうことがザラです。

それは敵ユニットも同様で、防御力の低いキャラを集中攻撃するなどのことはあるものの、基本的には味方全体に均等に火力を押し付けてきます。

一方でFEはペガサスナイトは弓持ちには絶対に勝てませんし、魔法職はペガサスナイトに手も足も出ないなど、極端にレベル差をつけるなどの措置を取らない限りは、相性を覆せません(なお風花雪月では3すくみは名残こそあるが廃止された)

 

以上のような違いがあり、ファイアーエムブレムは「有利相性をぶつけるために兵を運用するパズルゲーム」としての側面が強く、後続のSRPGのようにRPGの広範囲版といった「火力と回復のバランスを取って戦うRPG」とはゲーム性からして違うのです。

SRPGというジャンルは奥が深く、これからもいろいろな作品が出るといいですね。もしかしたら、ほぼ同様のフォーマットで新しいゲーム性も生みうるのではないかなどと考えてしまいます。

それでは!