ジェイガン系ヒロインをすこれ
突然ですが、皆様ラブコメにおいて「好きなヒロイン・ヒーローがいつも負ける」と感じたことはあるでしょうか?
それ、ジェイガン系ヒロインではありませんか?
ジェイガン系ヒロインとは、序盤にメインイベントを完了して、主人公に惚れるヒロインのことです。こういったヒロインには魅力的な要素が多数ある一方、その性質から絶対に勝つことがありません。
つまりは、最高の負けヒロインです。
そんな宿業を背負った悲しき負けヒロインをすこっていきましょう。
(以下、女性キャラを主体で考えますが、男性キャラでも割と似たようなことが言えます)
負けヒロインいろいろ
大前提ですが、ラブコメにおける恋愛の成就は、好感度で決まるのではありません。運命力で決まります。
つまり、主人公との関係性が運命的なものになればなるほど、そのヒロインを選ぶ理由が強まっていくわけですね。最終的に運命力を最も高めた子がメインヒロインです。
ここが大事なのですが、好感度はエピソードを積み重ねればいくらでも補強が可能ですが、運命力は簡単には増強できません。生まれ落ちた設定の段階で決まってしまうことがほとんどなのです。
負けヒロインには色々なタイプがあります。
それらを運命力でざっくりわけるとこんな感じ。
幼馴染
キング・オブ・負けヒロイン。
古くは王道ヒロインであり、青山剛昌という怪物まで生み出したが、今や負けヒロインの代名詞。
運命力の初期ステータスが高く、場合によってはカンスト済み。そのため、作中でドラマが生まれにくく、負けていく。
主な敗因は特別な関係ゆえの慢心や、今の心地よい関係を壊すことへの恐怖など。
当たり前にあったはずのものが、変わっていってしまう瞬間の喪失感がとても美しい。
妹はこの亜種。
正統派
ずっと前から主人公のことがひっそり好きだったが、行動を起こせなかったタイプ。なんだかんだ両想いだったりもする。
こちらも運命力が最初から高いが、中盤あたりでもう一段ブーストがかかるのが特徴。
しかし、いい子過ぎることが仇となり、運命力が届かず最後の最後で負けてしまう。その一途さや健気さが、悲恋指数が高く、素晴らしい。
後に説明するジェイガンタイプと共通する点が多く、高い人気を誇るが、どうあがいても負けヒロインである。
腐れ縁
喧嘩友達だったり、軽口を言い合う仲だったり、趣味仲間だったり。この気の置けない関係が枷となり、最初から最後まで高めのペースの運命力を持つが、ブーストがかからない。
先輩キャラの多くはここに属する。
設定上、メインヒロインになるポテンシャルも持っているが、メインヒロインの前でそんな真似は許されないので負ける。
自身の好意に気付いた時のドギマギ感と、関係を超えられず嘆くしおらしい姿のギャップがいじらしく、良質な負けヒロイン。
当て馬
途中から現れるテコ入れ要員。瞬間的に運命力を上げて去っていく。
押しかけ女房タイプにコミュ障に腹黒に、あらゆるタイプが存在しており、作者の性癖が出やすい。
それだけであるが、使い捨てゆえの設定の自由さにより、好き放題に悲恋を設定することができるのが強み。
アサシン
腐れ縁の亜種で、レギュラーキャラでありながら一切フラグを立てることなくストーリーが進行する中、「実は好きだった」と言い出して、突然運命力の王手をかけてくる。キャラ人気が出た結果、アサシンにジョブチェンジすることもある。
作者の気が変わるとメインヒロインになる可能性があるが、基本的には玉砕前提のポジション。玉砕後はエンディングへの後押しをする。
玉砕前提で告白するケースも多く、それでも一縷の望みに期待してしまう、そんな複雑な感情がこのタイプの美しさ。彗星のごとく現れ、彗星のごとく散っていく悲恋の儚さが、涙を誘う。
バーサーカー
複雑な想いが暴走し、シナリオを引っ掻き回す役。
主人公を拉致したりヒロインを追放したり、とにかく愛ゆえにやらかす。
人格に問題がありすぎて勝てないが、湖底の泥のようなどす黒い感情は、一定数の紳士を虜にする。
第二のメインヒロイン
三角関係を真面目に描くとき登場する。運命力ではメインヒロインに引けを取らないため、選択の際に血の雨が降るか、消化不良を起こしてしまう劇物。迂闊に手を出すべきではない。
などなど。
世の中には、いろいろな負けヒロインのタイプが存在します。そのどれもが美しく、上質な悲恋体験を我々に提供してくれるのです。お気に入りはどのタイプでしょうか?
ちなみに、メインヒロインは上記のどれかに該当するケースも多いですが、メインヒロインというだけで補正がかかっており、グイグイ運命力が上がります。クソが。
しかし、これに加えて大きな勢力であり、また支持を集めている至高の負けヒロインこそが、ジェイガン系ヒロインなのです。
ジェイガンとは
ジェイガンとは1990年発売のSRPG「ファイアーエムブレム暗黒竜と光の剣」に登場する熟練の老年騎士のキャラクターです。
周りが貧弱な装備しか持っていない中、一人だけ上級職のパラディンに就いており、強力な武器である銀の槍を装備しています。つまりは、なろう主人公です。
このアドバンテージを活かして、序盤は無双状態ともいえる活躍をし、みるみるレベルも上がっていきます。実に、なろう主人公です。
が、周りが上級職にクラスチェンジできるようになったあたりから陰りが見えてきます。
老年ということもあって成長率が悪く、一転してお荷物となってしまいます。なろう主人公ざまあ。
つまり、初期に無双するも伸び悩み、やがてベンチを温めるポジションこそが、ジェイガンです。
ファイアーエムブレムシリーズには、かなりの割合でこういった特徴のユニットが初期に登場しており、敬意をこめて「ジェイガン枠」と呼ばれます。ポケモンならアゲハントにバタフリー。
ジェイガン系ヒロインとは、そんなジェイガンと同じ宿命を持ったヒロインなのです。
ジェイガン系ヒロイン
ジェイガン系ヒロインとは、物語の序盤に主人公と運命的なイベントを迎えるヒロインです。だいたいは一人目や二人目になります。
しかし、最初期に運命力がカンストしてしまったせいで、その後、運命力を上げることができずに敗北していく悲劇の負けヒロインです。
まさに、序盤に無双し、中盤から後半にかけて徐々にフェードアウトしていくジェイガンのように、悲しい宿命を背負っています。
ジェイガン系ヒロインにはいくつかの特徴があります。
奥手
最初に運命力がカンストするという性質上、その後に運命力を上げることができません。
ここで、一気に運命力を上げてゴールにかかっては、他のヒロインの見せ場がなく終わってしまいます。
なので、ジェイガン系ヒロインは多くの場合、奥手で主人公との関係を進展させられません。
一途
序盤で恋に落ちる以上、その気持ちをずっと引っ張り続けます。
奥手な性質と相まって、健気に主人公に寄り添い続けます。
主人公の周りでどんな波乱が起きても、一度上がった運命力は下がることがなく、しばしば主人公の心の支えになることもあります。負けるけど。
身近
他に大きな運命力を背負ったヒロインがいる都合上、ジェイガン系ヒロインの抱えている悩みというのは、比較的些細なものが多かったりします。
しかし、それがかえって身近な悩みであるために、多くの共感を呼びます。
奥手で一途という性質と合わさると、彼女らが抱える悩みは、内面的なものを解決するケースが多いです。広がった世界では、全て主人公が背後に見え隠れするわけなので、もう好き好き大好きです。
世界の命運とかは関係ないけれど、そんな共感のしやすさも、ジェイガン系ヒロインの魅力のひとつでしょう。
かわいい
運命力は簡単には上げられませんが、好感度はエピソードを重ねれば蓄積されていきます。
そして、好感度はその時の運命力に比例するのです。
つまり、ジェイガン系ヒロインは、いち早く運命力を上げるために、好感度を上げる機会が他のキャラに比べて圧倒的に多い。伝えられない想いに悩まされる可愛らしいシーンをたくさん堪能できるのです。
最初に距離が縮まるだけあって、主人公との間には特別な空気も生まれます。
最高ですね。負けるけど。
人気
物資も乏しい序盤にゲームの爽快感を教えてくれたジェイガンのように、ジェイガン系ヒロインは作品の人気を牽引します。結果として、ジェイガン系ヒロインは作中でも屈指の人気キャラとして君臨します。
しかし、その特性上、必ず負けます。
他のヒロインを立たせる都合上、負けざるを得ないのです。
多くの紳士が血の涙を流したことと思われますが、最後に報われないところまで含めてジェイガンなのです。
後からやってくるヒロインたちの暴力的なまでの運命力を目の当たりにしつつも、一途に主人公を思い続けるからこそ、美しいのです。
復唱しましょう。
負けヒロインは、負けるからこそ美しい。
最後に二人、今をときめくジェイガン系ヒロインの例を挙げて、締めとしましょう。
中野三玖
(公式twitterより)
ジェイガン系ヒロインの王道中の王道にして大正義。
自分の趣味にも能力にも自信を持てなかった三玖の心をフータローが溶かしたことが全てのきっかけであり、五つ子の中では一番に恋心を自覚した存在でもあります。
その性格は、奥手にして不器用。
恋心を自覚するのにも、それを伝えようとするにも、いつも手惑います。
それでも、フータローのために、少しずつ努力を重ねていく姿が、いじらしくもあり、可愛いポイントなのです。
ジェイガンの兼ね備えるべき魅力を全て持った、理想のジェイガンです。
好感度イベントには事欠かない彼女ですが、運命力を上げるイベントは最初の顛末で尽きているのも確か。運命力では、メインヒロインには太刀打ちできません。
決して最後に選ばれることはない、悲しみの負けヒロインなのです。
レム
こちらも社会現象レベルの人気を叩き出した奇跡のジェイガン。
命のやり取りの多い今作ですが、序盤にスバルに内面に抱えていた闇を開放されることで、救われます。実は命を救われてますが、きっかけはあくまで内面的で、壮大な宿命を背負ったエミリアに比べると小規模なものです。
そこからは一途にスバルを「私の英雄」と呼び、慕い続けます。
その純粋無垢な愛と献身が、多くの人を虜にし、近年稀にみる人気キャラクターとなりました。
しかし、このジェイガンの問題点は、あまりに強かったこと。
スバルに正直に愛を告白し、一途に支えることを宣言するこの圧倒的ヒロイン力は、他のヒロインの追随を許さないレベルに成長していきます。何しろ、いち早く運命力を上げているので、もはや他の誰も追いつけません。
彼女は、多少の運命力の差をモーニングスターで粉砕しかねないほどの行動力と強さを兼ね備えていたのです。
そのため、黙らせないことには、好感度が上がりすぎてとんでもないことになっていたことでしょう。
終盤まで無双できるジェイガンは、ゲームバランスを滅ぼします。
ジェイガンはベンチを温めてこそ花。
一番手として名乗りを上げ、一線を退きつつも、なお物語に色を添えて輝き続けるからこそ、ジェイガンは皆の心に刻まれ続けるのです。
間違っても用済みだからって囮にして処分しないように。