ともきんぐだむ

主にゲームやアニメなどの話題について、その時、考えたことを書きます。

ドラゴンクエストXIはあえて時代に逆行した傑作

こんにちは、ともき(@tmk_423)です。 ドラゴンクエストXI S発売されましたね。 私ももちろん購入しましたが、怒涛の新作ラッシュを消化しなければならないため、まだ寝かせてあります笑

それでも、あえてDQ11の何がすごいのかを語りたい。

このゲーム、徹底的に現代の流行に逆行した作品です。 一本道のシナリオ、細かく区分けされたマップ、ターン制のバトル・・・ 「今更?」と言いたくなるような要素は枚挙にいとまがありません。

しかし、このゲームは紛れもなく傑作です。 それは、単純にクオリティが高いというだけではない。あえて流行に逆らうことで、流行のRPGが取り逃した要素を大切に拾い集めたのが、このゲームです。 そういった、往年のRPGの面白さを継承することにより、プレイヤーは過ぎ去りし時を求め、ノスタルジーを感じることができるのです。

RPGといえばオープンワールドの時代

現代、RPGといえば殆どの作品がオープンワールドという形式を採用しています。 オープンワールドの定義は様々ありますが、そこに踏み込んでも仕方ないので、大雑把に「シームレスに広大なフィールドを探索できるゲーム」ということにしましょう。 大都会を舞台にしたGTAや、重厚なファンタジー世界を描くSkyrimやWitcherなどの欧米ゲームをはじめとして、ゼルダの伝説ブレスオブワイルドやダークソウルもこの形式に分類されます。 Horizon Zero DawnやFINAL FANTASY XVRed Dead Redemptionなど、例を上げればきりがないほどに、今の時代はオープンワールドです。

このゲームデザインの最大の魅力は、「プレイヤーが自分の意志で冒険できる」というところにあるでしょう。 広大なフィールドを、好きな順番で巡ることができ、そこには必ずクエストや収集アイテムがある。収集アイテムは世界の謎に関わるフレーバーテキストなどであり、緻密に作り込まれた世界観を存分に堪能することができます。 そんな無尽蔵に世界を探索して回る面白さこそがオープンワールドの魅力であり、醍醐味であると言って良いでしょう。

ドラクエ11はこんなゲームのデザインとは真逆の路線を歩みます。 フィールドはたしかに美麗で広大ですが、マップは地方ごとに細かく区分けされており、移動の合間にはやや長いロード時間をはさみます。また、行ける場所も限られており、ゼルダみたいに、向こうに見える高い山の頂点を目指すといったことはできません。 リアリティもへったくれもなく、実にゲーム的なマップデザインをしているんですよね。

しかし、エリアで分かたれた世界にすることには、メリットがあります。 それは、「風土を連続的に変化させる必要がない」ということです。 オープンワールドの作品は、シームレスに移動できる世界を描くために、一定のリアリティが求められます。「川を超えたら平均気温が10度変わった」みたいなことはできないわけです。 そのために、1つのワールドで複数の文化圏を描くのは難しいという問題に直面します。多様な文化を描こうとしたら、物量がとんでもないことになるんですよね。 つまり、1つの文化圏をじっくり深堀りしていくスタイルが基本となります。 これの解決策としてWitcher IIIのように、3つの地方を非連続に行き来することで、3つの文化圏を対照的に描くという方法があります。あるいは、ゼノブレイド2のように、世界観を小分けにすることで、多様な国を描くこともできます。いずれにせよ、エリアを分割しないことには多様な文化を描くことができないのです。

ドラゴンクエストXIオープンワールドという形式を採用しないことにより、多様な文化を描くという側面に振り切りました。 世界を小分けし、パッケージ化したことにより、広い世界を、具体的にはワールドマップを描くことができます。造形がリアルになるにつれ、ワールドマップが存在するRPGは減少傾向にありましたが、あえて逆行した形になります。 ドラクエ11に登場する国の文化は実に多様です。 いかにもドラクエ的な西洋ファンタジーの町並みを作っているデルカダール王国を始めとして、和風そのもののホムラの里や、地中海風のソルティコ、沖縄風のナギムナー、東南アジア風のプチャラオなど、町ひとつひとつが全く異なる文化圏を形作っています。 民家の建築様式はもちろん、街の人々の着ている服や、生えている植物の種類まで違います。(ホムラの里にはちゃんと竹が生えている)頭が狂っているとしか思えない物量です。 つまり、一つの地域を詳細に描く労力を、広い世界を小分けに描くことに全振りして、ワールドマップを冒険するという昔ながらのRPGの強みを全力で表現しに来た作品がDQ11です。

ストーリー主導

オープンワールドの話にも繋がりますが、最近のゲームはやりこみや探索がベースになっています。 膨大なクエストをこなしたり、拠点を作ってみたり、寄り道要素を充実させるスタイルが非常に多いです。 これには理由があって、ストーリーを主軸にすると、ネタバレ動画で事足りてしまうという問題が現代では生じてしまう。 実際、ドラクエ11のネタバレ動画は、ほとんどが数十万再生を獲得しています。(一応、このゲームの大部分は配信禁止です) これに対しては、ゲーム制作側も悩まされており、配信禁止を徹底するケースもあれば、明確にガイドラインを作るケースまで様々ありますが、最近では「自分でプレイしたいと思えるゲームを作る」という方向に舵を切られているようです。 コマンドRPGにまさかの方向転換を図った龍が如く7のスタッフも、ファミ通のインタビューにて明言していますし、業界全体の認識としてこの方向性が共有されていることは間違いないでしょう。 それがゆえに、自分自身でプレイスタイルを模索していくオープンワールドのような形式が流行っているとも言えるかもしれません。 あるいは、育成やコープ集めに重きを置くペルソナやファイアーエムブレムのような形式もあります。

そんな中、ドラクエ11はストーリー主導の一本道という、究極に動画で済ませやすい作品なんですよね。 その方針に踏み切れたのは、ドラクエというブランドを信じていたからという側面もあるとはいえ、非常にチャレンジングといえます。 一方で、しっかりとストーリーを追うことに注力させるRPGが少なくなっていることも確かです。良し悪しとは関係なく。(テイルズあたりはまだその路線をしっかり維持してますね) であるからこそ、重厚で長大な、全世界を巡るストーリー主導の作品は「昔ながら」というイメージを与えます。 この「昔ながら」感がこのゲームの肝なのです。

ノスタルジー

ドラクエ11のコンセプトの一つに「ノスタルジー」があります。 「過ぎ去りし時を求めて」という副題は、もちろんストーリー上も重要な意味を持ちますが、それ以上に「あの時遊んだRPGの面白さ」という意味も含んでいます。 歴代作品の要素をこれでもかと詰め込むような構成や、スタッフロールで歴代作品を回想させる演出、日常とリンクさせた発売前の宣伝など、某映画が恥ずかしくなるレベルで、あらゆる方法で「あの頃遊んだゲーム」を思い出す作りになっています。 ストーリーの中でも、過去作を彷彿とさせる仮面舞踏会や人魚の村などが登場しますし、世界崩壊や隕石、時間を巡る物語に散髪イベントと、むしろライバルの某シリーズを思い出すようなシーンまであります。 それほどまでにノスタルジーにこだわっているからこそ、このゲームのシステムは「あの頃遊んだゲーム」の要素を内包していなければならない。

なので、近年ではめっきり減ったターン制のコマンドバトルに、マップと町からなるシンプルな世界設計、そしてストーリー主導で一本道の、地に足ついたゲーム進行などが必要だった。 もちろん、人によって「あの頃」の時期も内容も違うので、この試みは簡単ではありません。 そのために、このゲームはDQ8をベースにしつつも、2Dモードを実装したり、オーブ集めなどの要素を復活させたり、様々な形で「ドラクエを遊んだ世代」に刺さるような構成になっています。 そうやって、すべての要素で徹底してノスタルジーを呼び起こすことにこだわることができたのは、ひとえにドラゴンクエストという日本のRPGの歴史とともに歩んできたタイトルであるがゆえです。 ドラゴンクエストというブランドをフルに活かして全力でノスタルジーで殴ってきたこの作品は、それがゆえに人々の記憶に残る作品となりました。

ドラクエ11は、個々の要素で見れば、確かに真新しい要素はありません。 しかし、それは時代に遅れているからではなく、時代が取り残したものを拾い集めたからです。 もちろん、現代のRPGは面白い。 今からでも全力でオススメしたくなるような魅力的なタイトルにあふれています。 しかし、現代のRPGには求めにくいものもあります。 それらを「ドラゴンクエスト」という歴史の背骨の下で拾い集めたこの作品は、紛れもない傑作なのです。

余談

今回の話とはそこまで関係ないのでかけなかったのですが、この作品はモンスターの作り込みも頭がおかしいです。 FF15をはじめとして、モンスターたちにきちんと思考ルーチンが存在し、生態系を作っている作品は珍しくないですが、ドラクエ11はそっちとは別方向にモンスターの造形にこだわってます。 集団で集まって眠る一角ウサギや、ドラムゴートの太鼓に従って仲良く行進するスライムベスなど、「この魔物はこんなヤツだったのか!」と思わせる要素に満ちている。 さらに個別に眠りモーションが合ったり、やられモーションも多種多様と、一体一体のモンスターへの愛が凄まじい。 これができるのは、ひとえに独創的なデザインを誇る鳥山明のセンスに起因するところですね。ここまで、全モンスターの造形に愛着が持てるのは、ポケモンぐらいしかないかもしれない。 懐かしの魔物たちの生態も再発見できるところが、この作品の魅力でもあります。 プレイする時は、強敵にヒィヒィ言うこともあると思いますが、そんなところにも着目してみてください。