ともきんぐだむ

主にゲームやアニメなどの話題について、その時、考えたことを書きます。

HEAVY RAIN -心が軋むとき- 〜ゲーム紹介③〜

今日紹介するのは、フランスのスタジオQUANTIC DREAMが手掛けたアドベンチャー作品「HEAVY RAIN -心が軋むとき-」です。

QUANTIC DREAMというと、最近はDetroit: Become humanでブイブイいわしてるわけですが、今回はあえてこっち。 Detroitとはまた違った魅力のある作品なので、ぜひともプレイしてもらいたいなあと思う作品です。

体感するアドベンチャー

Detroit同様、精巧なグラフィックで作られた世界を探索をしながら、物語を前に進めていくアドベンチャーゲームです。アイテムを拾って調べたり、時には命の危機をQTE(Quick Time Event: タイミングよくボタンを押していくやつ)で乗り越えたりしながら、物語の真相に迫っていきます。

主人公は、息子を誘拐され真犯人から無理難題を要求される父親イーサン、有能FBI捜査官のノーマン、執念で事件を追いかけるくたびれた私立探偵のスコット、正義感の強い駆け出し記者のマディソンの4人。それぞれの思惑が交錯し、時に交わりつつもそれぞれの物語を紡いでいく、巧みな人間ドラマが最大の見所。それらが、美麗なグラフィックと大胆なカメラワークで表現されるため、さながら映画の世界に入ったような感覚です。

4人の群像劇スタイルではありますが、この物語の主軸はイーサンです。イーサンは、かつて交通事故で長男ジェイソンを失ったショックで妻とは別居しており重篤PTSDを患っています。彼にとって、唯一の救いは次男のショーンでしたが、彼が折り紙殺人鬼によって誘拐されるところから物語は始まります。息子のために全てを投げ打つイーサンの姿は痛々しく、それでいて美しく、眼を見張るものがあります。犯人から告げられる課題は、高速道路を逆走したり、高圧電流の走る発電所を潜らせたり、死と隣り合わせの危険なものです。なお、失敗すると普通に死にますが、物語はそのまま進行します。

QUANTIC DREAM作品はheavy rain→BEYOND→Detroitという順で推移していますが、基本的なシステムは既に完成されています。ボタンの連打や長押しなどを視覚的にわかりやすく表現するUXは健在。

個人的に大きな特徴だと思っているのは、この物語は多様な分岐構造を持っているにも関わらず、それが視覚化されていないこと。つまり、プレイヤーはこの物語がいつどこで分岐したのか、一周しただけでは知る術はありません。だからこそ、ひとつひとつの決断が重くなる。どの行動が未来に直結しているのかわからない緊張感を、登場人物と一緒にプレイヤーは体感ことができます。ゲームでしか体感できない物語を作るという試みが成功していると言えるでしょう。

Detroitは分岐の視覚化を取り入れましたが、その結果良くも悪くもゲーム的になったと言えます。つまり、ゲーム世界におけるストーリー進行が、チャートを埋めるという作業によって象徴されるようになりました。Heavy rainの物語では、少なくとも1プレイの範疇ではそれはプレイヤーにとって唯一無二の物語になります。「後悔」という選択肢がなくなるわけですね。

全ての行いが後に跳ね返ってくる。すなわち、訪れる展開は(たとえそれが製作者が描いたものであるにせよ)プレイヤーの責任です。そんな重さが、映像作品とは異なる一体感や臨場感を与えてくれる。この作品は、ゲームというメディアの魅力を、全面に押し出してきた作品だと言えるでしょう。

※ネタバレ注意

個人的に最もこのゲームが素晴らしいと思っている点は、「衝動的な殺人」を体感させたことだと思っています。

イーサンは終盤の課題では自ら指を切り落としたり、相当やばいことをやらされる。犯罪行為も多く含まれるため警察にも追われる羽目になり、精神的にも限界です。そんな中、告げられた課題は「ある男を殺害すること」。

当然、そんなことはしたくありません。イーサンは何度も命の危機を乗り越えてきたからこそ、命の重みを知っています。

とりあえず真相を調べるため、留守を狙ってその男の家へ行くのですが、そこで事件が起きます。男が帰ってくるのです。

現れるQTEの選択肢。ここで、プレイヤーは既に何度もQTEで命の危険を乗り越えてきたため、慌ててそのボタンを押します。すると、なんとそのボタンは銃の引き金であり、イーサンは男を殺害することになるのです。

これは、咄嗟の衝動的な反応で命を奪うという一連の殺人をゲームの中で体感させたことになります。

QTEというシステムを逆手に取ったこの表現方法は実に素晴らしい。

この瞬間一点を表現するためにこのゲームは作られたと言っても過言ではないほどに、プレイヤーに「体験」を与える。Heavy Rainはそんな恐ろしいゲームです。

イーサンが実に「いいおじさん」なんですよね。

全体的にくたびれつつも、身体にはたくましさの名残が残っている。その絶妙なオジサン感がなんとも素晴らしい。

妻と微妙な距離感になっているところに、若くて美人の新聞記者マディソンと出会って・・・

この結末がどうなるかは、例によってプレイヤーの選択に委ねられているわけですが、当然のようにくっつけてしまいました。

くたびれ、傷ついたオジサンが癒やされる姿、素敵じゃないですか・・・?

奥さんごめんなさい。

個人的な思い出

謎のバグにより、イーサンの自宅の中でも雨が降っていた。

むっちゃ雨漏りする家庭みたいになってしまって申し訳なかった。

こんな人にオススメ

海外ドラマの雰囲気がすき

重厚な物語を体感したい

ひたむきな愛に心打たれたい